製作費約300万円という低予算ながら、興行収入31億円を超える大ヒットを記録した映画『カメラを止めるな!』を、ようやく観ました。
監督は、本作が長編商業映画デビューとなった上田慎一郎監督。出演者も当時は知名度の高くない俳優が中心という、異例の組み合わせで制作された作品です。
2017年に製作され、2018年に劇場公開。当初はわずか2館での上映でしたが、口コミで人気が広がり、最終的には300館以上で上映される大ヒットとなりました。
公開当時は、低予算のインディーズ映画が大ヒットしたというニュースを何度も目にしていました。
ずっと気になっていたものの、ゾンビ映画ということで、なかなか観る気になれませんでした。しかし、Amazon Prime Videoの会員特典で視聴できるようになっていたため、この機会に観てみることにしました。
結論からいうと、前半の違和感を後半で見事に回収する、よくできた映画でした。
映画の前半と後半で作品の印象が大きく変わり、ゾンビ映画でありながら、最後には思わず感動してしまいました。
私の評価は82点/100点(星4つ)です。
※この記事は途中から結末に関わるネタバレを含みます。これから観る予定の方はご注意ください。
『カメラを止めるな!』のあらすじ【ネタバレなし】
山奥の廃墟で、ある自主映画の撮影隊がゾンビ映画を撮影しています。
リアリティを追求する監督はなかなかOKを出さず、撮影は何度もやり直しに。そんな中、撮影現場に本物のゾンビが現れ、スタッフや出演者が次々と襲われていきます。
しかし、監督は撮影を止めようとしません。
本物のゾンビが現れたことを喜び、カメラを回し続けるのです。
37分間のワンシーン・ワンカットで描かれるゾンビサバイバル。その裏側には、思いもよらない物語が隠されています。
これ以上詳しく説明すると、この映画の大きな魅力を損なってしまいます。
『カメラを止めるな!』は、できるだけ予備知識を持たずに観ることをおすすめします。
『カメラを止めるな!』を観た感想【ここからネタバレあり】
予備知識ゼロで観た前半37分のゾンビ映画
公開から約2年が経っていましたが、私は予告編すら観ずに本作を鑑賞しました。
本当に普通のゾンビ映画だと思っていたのです。
映画は、山奥の廃墟でゾンビ映画を撮影している場面から始まります。
主演女優がゾンビに襲われるシーンを撮影していますが、監督は演技に納得できず、何度も撮り直しを要求します。
監督の演技指導は異常なほど熱がこもっており、かなりエキセントリックな人物として描かれています。
そして、撮影現場に本物のゾンビが登場します。
スタッフや出演者が次々と襲われる中、監督だけは大喜びで撮影を続けます。
カメラは一度も止まることなく、ゾンビに襲われる人々を追いかけていきます。
私は、ゾンビ映画を撮影しているスタッフが本物のゾンビに襲われるという、少し変わった設定のホラー映画だと思って観ていました。
ただ、途中で「ん?」と思う場面が何度もありました。
演技が不自然だったり、登場人物の行動に違和感があったり、妙な間が生まれたりします。
手ブレも激しく、正直なところ、前半部分はアマチュアが制作した映画を観ているような印象でした。
それでも、37分間のワンシーン・ワンカットという撮影方法には驚かされました。
そして、ようやくエンドロールを迎えます。
「これで映画が終わりなのか?」
そう思ったところで、突然「1か月前」というテロップが登場します。
ここから映画の印象が一変しました。
後半で明かされる37分間の撮影の裏側
後半では、テレビの生放送で37分間のワンシーン・ワンカットのゾンビ映画を撮影することになった監督の物語が始まります。
前半で異常なほどエキセントリックだった監督は、実際には腰が低く、周囲に気を遣う人物でした。
しかも、集められた出演者たちはクセの強い人ばかりです。
演技へのこだわりが強すぎる人もいれば、撮影上の制約が多い人もいて、監督は振り回されっぱなしです。
ただでさえ難しいワンシーン・ワンカットの撮影を、こんなメンバーで成功させられるのでしょうか。
しかも、生放送なので失敗しても撮り直しができません。
撮影当日になっても不安要素は解消されず、次々とトラブルが発生します。
そんな状態で、映画前半に観た37分間の撮影が始まるのです。
ここからが本当におもしろかったです。
前半の違和感が次々と回収される伏線回収が見事
後半では、前半に観たゾンビ映画を、今度は撮影スタッフの視点から見直すことになります。
すると、最初に感じた違和感の理由が次々と明らかになっていきます。
「なぜあんな不自然な演技だったのか」
「なぜ妙な間があったのか」
「なぜ登場人物があんな行動を取ったのか」
前半では単に映画の完成度が低いからだと思っていた場面にも、きちんと理由があったのです。
「ああ、そういうことだったのか!」
この納得感が非常に気持ちよく、後半は一気に引き込まれました。
前半で観客に疑問を持たせ、後半でその疑問をテンポよく回収していく構成は見事です。
しかも、後半の展開を知ったうえで前半を振り返ると、同じシーンでも全く違った見え方になります。
映画の撮影現場を本当に覗き見ているような感覚になり、その没入感もすばらしかったです。
前半では低く評価していた部分が、後半では映画のおもしろさに変わっていく。
この構成こそ、『カメラを止めるな!』の最大の魅力だと思います。
トラブル続きの撮影現場が生み出すおもしろさ
撮影の裏側がわかると、前半の37分間がいかに大変な状況で撮られていたのかが見えてきます。
生放送でワンカット撮影をしなければならないにもかかわらず、現場では予想外のトラブルが続出します。
それでもカメラを止めることはできません。
スタッフや出演者たちは、その場で何とか対応しながら撮影を続けます。
前半では不自然に見えた演技や行動も、裏側を知ると必死の対応だったことがわかります。
観客としては笑ってしまうような場面でも、撮影スタッフにとっては必死です。
このギャップがおもしろく、後半はコメディ映画として楽しめました。
また、次々と問題が発生する中で、スタッフが協力して一つの作品を完成させようとする姿にも引き込まれました。
ゾンビ映画なのに泣ける!父と娘の物語
『カメラを止めるな!』には、もう一つ印象に残った要素があります。
それは、監督と娘の関係です。
監督には妻と娘がおり、娘も映画の仕事を志しています。
しかし、娘は父親の仕事にあまり敬意を払っておらず、親子の関係は決して良好とはいえません。
娘が撮影現場を訪れたのも、お目当ての俳優を見学するためでした。
ところが、撮影現場でトラブルが続く中、娘も映画を完成させるために力を貸すことになります。
そして、父と娘が一つの作品を完成させるという共通の目的に向かって協力していきます。
この展開がよかったです。
前半では単なるゾンビ映画だと思っていた作品が、後半では映画制作のドタバタ劇になり、最後には父と娘のヒューマンドラマにもなっていました。
まさかゾンビ映画を観て感動するとは思いませんでした。
『カメラを止めるな!』がおもしろい理由を考察
この映画がおもしろい理由は、前半と後半で同じ出来事の見え方が変わることにあると思います。
前半では、観客はゾンビ映画の登場人物を見ています。
しかし後半では、そのゾンビ映画を作っている人たちを見ることになります。
つまり、同じ37分間の映像でも、視点が変わることで全く違う物語になるのです。
前半で感じた違和感も、後半では撮影現場のトラブルとして説明されます。
一度観た映像の意味が後から変わるため、前半の印象までひっくり返されます。
さらに、映画の撮影に関わる人々の苦労や、監督と娘の関係も描かれており、単なる伏線回収だけでは終わりません。
低予算映画でありながら、構成の工夫によってここまで楽しませてくれることに驚きました。
まとめ|『カメラを止めるな!』の評価は82点
『カメラを止めるな!』の評価は82点/100点(星4つ)です。
前半の伏線を後半で見事に回収していく構成は、すばらしいの一言です。
正直なところ、前半部分だけを観れば、手ブレが激しく、演技も不自然で、完成度の高い映画には感じられませんでした。
しかし、その印象を後半で見事にひっくり返してきます。
前半ではゾンビ映画、後半では映画制作の舞台裏を描くコメディ、そして最後には父と娘のヒューマンドラマとして楽しめました。
これだけの要素が一本の映画に詰め込まれているのですから、よくできた作品だと思います。
予備知識を持たずに観たことも、楽しめた大きな理由でした。
まだ観ていない方には、できるだけネタバレを避けて観てほしい映画です。

