予算300万円の低予算映画ながらも興行収入31億円という大ヒットを記録した『カメラを止めるな!』(2017年)をやっと観た。
この映画、さらにすごいのは新人映画監督×無名俳優という組み合わせである。
上田慎一郎監督の長編映画デビュー作である。
最初はミニシアター2館での公開だったのが、人気に火が付いて300館以上に拡がったというものすごい作品である。当時は低予算映画が空前のヒットというとこで朝のニュースにもなっていた。
ずっと気にはなっていたものの、ゾンビものということで食指が働かずにいた。
Amazon PrimeのPrime会員特典対象となっていたため、今こそ観るチャンスとばかりに観たのだ。
あらすじ
とある自主映画の撮影隊が山奥の廃墟でゾンビ映画を撮影していた。本物を求める監督は中々OKを出さずテイクは42テイクに達する。そんな中、撮影隊に 本物のゾンビが襲いかかる!大喜びで撮影を続ける監督、次々とゾンビ化していく撮影隊の面々。
『カメラを止めるな!』公式HP: https://kametome.net/introduction.html
”37分ワンシーン・ワンカットで描くノンストップ・ゾンビサバイバル!”……を撮ったヤツらの話。
とこれ以上のあらすじを書くとネタバレになるので、感想であらすじを含めて書く。
カメラを止めるな!を観た感想(ネタバレあり)
公開から2年後にも関わらず、予告編も見ずに前提知識0で観た。本当にゾンビものと思って観た。
まさか”37分ワンシーン・ワンカットで描くノンストップ・ゾンビサバイバル!”……を撮ったヤツらの話。とは思っていなかった。
この映画は全くの予備知識なしで観たほうが絶対に楽しめる。
物語はとある廃墟での撮影シーンから始まる。主演女優がゾンビに襲われるシーン。エキセントリックな監督の熱のこもり過ぎた演技指導。そこからカメラはずっと回り続けている。
その後、本物のゾンビが登場し、次々に人が襲われていくのだが、エキセントリックな監督はゾンビに襲われるキャストを嬉々とした表情で撮影している。
ゾンビ映画を撮影するキャストとスタッフがゾンビに襲われる話と思い込んでみていた。途中、ん?と思うシーンは確かにあった。むしろ多々あった。
ゾンビに襲われながらもカメラは回り続け、37分間のワンシーン・ワンカットがエンドロールを迎える。映画は終わったのか?と思うと、突然1ヵ月前というテロップが登場する。
物語の後半ではTV生放送の37分間のワンシーン・ワンカット映画を撮ることになった男の話という視点でストーリーが展開される。エキセントリックな監督は腰の低い男だったことがわかる。
そして映画のキャスト陣はクセモノ揃いである。果たしてこんなメンバーで前代未聞のワンカット・ワンシーンの映画が撮れるのか?しかも生放送で。という気持ちになってくる。
監督には妻と娘がおり、娘も映画の仕事を志しているものの、父親に対してのリスペクトはない。『カメラを止めるな!』は父と娘のヒューマンドラマの側面もあり、このあたりも見どころのひとつである。
クセモノ揃いのキャスト陣は撮影当日になっても全くまとまっておらず、不安しかない状態で最初の37分のワンシーン・ワンカットの冒頭シーンが再登場する。映画の前半部分で観たストーリーを作り手の視点で見返すことになるのだ。
ここで前半部分の疑問がきれいに回収されていくさまは見事である。『カメラを止めるな!』をゾンビ映画として観ていたときに何だこの演技は?といったところが、あっなるほど、そういうことだったのか!とテンポよく回収されていく。
本当に映画の舞台裏を覗き見ているような錯覚になる。このあたりの没入感はすごい。
作り手の視点でみると生放送のワンカット・ワンシーン映画撮影にも関わらず、トラブルの連続であることがわかる。お目当ての俳優を観るために監督の娘が撮影現場に見学に来ていた。そして父と娘もこの映画作品を完成させるためにひとつとなっていく。ゾンビ映画なのに泣けるのだ。
まとめ(82点/100点)
前半部分の伏線を後半にきれいに回収していくさまは見事の一言である。
前半部分はアマチュアの映画作品を観ているようなクオリティである。手ブレもすごい。この前半の低評価を後半部分できれいにひっくり返してくる。
『カメラを止めるな!』の評価は82点(星4つ)だ。
映画前半では、ゾンビ映画を撮っている撮影クルーが本物のゾンビに襲われる映画としても楽しめる(演技のクオリティは低い)。映画後半では、映画の裏側を観るドキュメンタリー作品のように楽しめる。そして父と娘のドラマ。1本の映画にギュッと詰まった作品だ。