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映画『茄子 アンダルシアの夏』を観た感想(ネタバレ含む)。短編映画ながらも濃い内容がギュッと詰まった力作。

4.0
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映画
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Amazon Primeで『茄子 アンダルシアの夏』を観た。

漫画家 黒田硫黄の短編マンガ集『茄子』に収録された『アンダルシアの夏』を原作とするアニメーション映画である。自転車のロードレース題材としている。

日本アニメ界有数のサイクリストとして知られる高坂希太郎が監督作品だ(脚本、作画監督も兼ねている)。主役の声優は大泉洋だ。

映画『茄子 アンダルシアの夏』は第56回カンヌ国際映画祭に日本アニメーション映画として初めて出品された作品である。2003年公開時には上映時間は47分と一般的な映画の半分の長さであったことから、映画チケットも半額としたことが話題となった映画でもある。

Amazon Primeで4.2の高評価(2021/5/10時点)でだったので観てみたのだが、たしかにおもしろい。

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あらすじと見どころ

世界三大自転車レースのひとつである”ブエルタ・ア・エスパーニャ”が舞台である。

主人公のペペはベルギーのビール会社パオパオビールがスポンサーとなっているロードレースチームに属するアシスト選手だ。チームの主役であるギルモアをレースで勝たせるために仕事をするのが役割である。

うだるような暑さの中、大集団でのスロー走行が続く中、ペペは監督の支持でレース中盤にアタックを仕掛ける。酷暑の中、中盤の早いタイミング、かつ坂道の厳しいところであえて仕掛けることで、チームのエースであるギルモアとともに逃げ集団を形成し、最後まで逃げ切る戦略に出たのだ。

このアタックにより11人の先頭集団が形成される。

レース中は監督と無線で指示を受けている。監督が乗るサポート車両にはチームのスポンサーも同乗しており、レースに勝てないのはチームワークを乱すペペが原因だからクビにしろという指示を出す。

無線がつながった状態での発言であったため、レース中にも関わらずペペはクビになる指示を聞いてしまう。しかし、ペペはプロレーサーとしてチームがレースに勝つための仕事に徹するのだ。

このあたりがこの映画の見どころのひとつである。

ペペはもうひとつの葛藤を抱えている。この日はペペの兄であるアンヘルとかつての恋人であるカルメンの結婚式であった。

二人の結婚式はペペの地元であるアンダルシアで行われており、レース途中でアンダルシアの村を通過するのだ。兄のアンヘルとカルメン、そしてペペ。3人の物語がレース中に錯綜する。

これがもうひとつの見どころだ。

レースの展開はペペの地元を通過する時に様相を変える。監督の支持を受け、チームのエースであるギルモアを勝たせるためにペペは先頭集団をふるい落とすためにアタックを仕掛ける。しかし、脅威とみなされていないペペを追従するものはおらず、ペペは単独独走の状態となる。

結婚式を終え、ペペを応援するためにアンダルシアのレースコースに駆けつけるアンヘルとカルメン。ペペに続く逃げ集団は突如アクシデントに合い、ギルモアが転倒してしまうのだ。

監督は作戦を変更し、ペペにトップのまま逃げ切るよう支持を出す。

ゴール直前、ペペは先頭集団と後続の大集団にのみ込まれる。ラストスパートを仕掛け、トップ4人が大混戦となり、そのままゴールを通過する。4人が同時にゴールし、勝者は写真判定となった。

果たして誰が勝ったのか。このラスト2km、1km、ゴール直前のレース風景は気持ちが盛り上がってくる。レース描写も秀逸である。ロードレースの描写の巧みさが、この映画をおもしろくさせている。

そしてペペは地元での優勝を掴み取った。レース後、疲労を抜くために1時間ほど軽く走るペペ、そして兄のアンヘルが競技用自転車で、元恋人のカルメンは車に乗り、ペペの後ろに近づいてくる。

この3人のやり取りで、ペペの複雑な心境が描き出されている。そして複雑な思いを抱いていた故郷と向き合うことで自分の中の葛藤と折り合いをつけていく。

まとめ(80点/100点)

ペペのプロとして仕事に取り組む様を描く仕事映画でもある作品だ。

ロードレース映画としても大変おもしろく、その試合展開は手に汗握る。特にラストスパートは観ている方の気持ちもどんどん高ぶってくるような展開となっている。

短編アニメーション映画なのでちょっとした時間に気軽に見ることのできる映画だが、内容はしっかりと詰まっている力作だ。

映画を観た評価は80点(星4つだ)。

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